北海道の巻(2)

1986年8月

第3日

いつものように僕のキャンプ場での朝は早い。雨が降ってないのでテントの外でパッキングをし、テントと寝袋を朝日に乾かす。軽い朝食の後、お茶を飲む。さあ、今日はいい天気になりそうだ。出発。

交通量の少ない道をゆっくりと北上する。以前東北第二回目のツーリングで走っているので地図をみることも無い。まず、本州最北端の記念碑に立ち寄ってから、大間港に行くことにして、ただ淡々と走る。

「痛い!」

森の中を走っていたら、いきなり左の内腿に激痛が走った。一瞬何が起こったのか判断が付かなかったが、見るとハチが居る。慌ててグローブをした左手で払いのけ、追いかけられたら恐いので、しばらくそのまま走った。

路肩に止まり、よく見ると確かに刺されている。ハチのやつ、いきなり誘拐されそうになって慌てたんだろうな。夢中で攻撃したに違いない。

とにかくアンモニアで消毒。とは言っても、自前の物しか持ちあわせてはいなかったのだが・・・。

これぐらいしぶとくなくては一人旅は続けられない。

大間港のフェリー乗り場に着いてさっそく乗船手続き、なんだかすごく待たなくてはならないみたいだ。次の便には乗れないだろう。と思いつつバイクに戻ると、前に並んでいる連中は皆昼食に行ったみたいで、ほとんどいない。そのまましばらくいたら、ついに僕の番号が呼ばれた、ハチの災難の後には幸運が回ってきたらしい。すぐにバイクを乗船させた。

一人旅ではたいくつなんて無い。することがいっぱいある。話し相手が居なくてさびしくないかというと、まったく逆で、普段の生活よりも自分との対話の時間がたっぷりある。知らない自分、意外な行動をとる自分に驚いたりで、まったくたいくつなんてしない。

フェリーのデッキに登るとライダーが何人かいる。たいていはグループで固まっているので、一人旅同士の物がなんとなく近くに寄ってくる。はたして、今回も二人の仲間が出来た。一人は昨日の雨の陸中海岸で転んだという。舗装道路は乗用車用に出来ているので、バイクには危険なカーブがある。

函館から3人で一緒に走る。あっそうだ、北海道の地図を持ってこなかった。まあ、そんなに複雑なことはないだろうと、いつもよりもさらに大雑把な気分だ。なにしろ、北海道だ。今、北海道を自分のバイクで走ってるんだ。感激でどっちがどっちだか、気にしてる余裕も無い。

ちょっと走って大沼公園に立ち寄る。ここには昔来たことがある。中学2年生の時、父と一緒に北桧山町の叔父を訪ねた帰りだった。函館観光バスでたいていの名所をぐるっと廻ったのだった。その同じ記念写真サイトで一枚撮影。

おやつにじゃがバターを食べた。うま〜い!

前の車に着いて走っていると、80kmぐらいのスピードになっている。連れの一人は125ccのロード・スポーツだが、このスピードでの巡航ではかなりきつそうだ。また休憩。ここで、本日のテント・サイトを洞爺湖と決める。二人ともテントも何も持ってないという。僕のは4人用の大型だから、泊めてあげることにした。旅は道連れだ。

洞爺湖をぐるっと廻りながらキャンプ場を捜すと半周したあたりで見つかった。僕ともう一人がテントを食事を用意し、もう一人はビールの買い出しに行ってもらった。ところが、なんとこの二人、まったく飲まないという。あれっ?この話どこかで聞いたなぁ?おかげでまたもや呑んべえツーリングになりそうだ。

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