工作室 105 ガラポン抽選機

ガラポン抽選機

年末が近づいてきました。年末と言えば商店街恒例の抽選会がありますね。30年ほど前に一等の買い物自転車を当てたことがあります。あれ以来つきには見放されてしまったようで、毎回ポケット・ティッシュしかもらえません。

あのがらがらと回すとぽろんと玉が落ちてくる抽選機、どうやらガラポン抽選機というらしいです。一体どんなしくみになっているんだろうと気になっていました。そこであれこれ調べてみたら、どうやらこれで動くみたいだと分かってきました。肝心な点は玉をひとつだけ捕まえて排出する機構です。この部分はYouTubeで観たYoshimune Watanabeさんの映像を参考にしました。


設計

いつものようにSketchUpで設計しました。今回はかなり複雑なのでいくつかに分けてあります。

左の画像をクリックするとダウンロードできます。Zip形式で六つのファイルを圧縮してありますので、解凍してご使用ください。

回転体は工作が簡単だろうと思い、六角形にしました。

製作

回転体の枠を構成する六枚の板から切り出し作業を始めました。これは糸鋸盤のテーブルを30度傾けて斜めにカットしている様子です。

一枚余分に作っておきました。

内部機構の分解図です。玉をひとつだけ捕まえて、これを保持しつつ回転し、排出口の蓋が自動的に開いて外部に放出し、その後蓋は自動的に閉まるというしかけです。

使用する玉は直径10mmの物を想定しています。

この部品を切り出します。細かくて精度の要求される切り出しです。

排出口の蓋は2mm厚の合板を使いました。とても薄いので通常の蝶番は使えません。そこで中学生の頃から使っていた布ヒンジ方式の採用です。想像以上によく動きますよ。

これを孔をふさぐようにビスで取り付けます。蓋の先端部分にはビス・ナットを取り付けて重力を利用した開閉動作のおもりとしています。

これをこのように覆います。三角形の部分は玉を脇にそらす為のものです。

この覆いによって、開く角度を制限しています。あまり開きすぎると元に戻りませんからね。ちょうどこの角度になったときに、保持していた玉が上から落ちてきて斜めの蓋に当たり、孔から外に排出されるのです。

玉をひとつだけ捕まえて保持する機構を組み立てます。

これを回転体の枠となる台座に取り付けます。

排出機構との位置関係はこのようになります。

玉の流れを制御するガイド板を取り付けます。

外部からはただ孔があいているようにしか見えません。

動作確認をしてみます。このように玉をひとつ捕まえると、他の玉は排除します。

回転してゆくと玉は保持されています。さらに回転が進むと排出機構の蓋が開き、さらに回転してゆくと玉が落ちて排出口から出て行きます。

ここまで作ってから、さてどうやって玉を回転体に入れようかという問題が出てきました。あれこれ考えてイメージスケッチを描き、SketchUpで設計したのがこれです。

分解図を描いて部品の寸法を決めます。

扇形の部分は2mmの合板の端材の寸法に合わせて木取りをしてみました。

実際に鉛筆で線を引いてみます。

これを二枚に分け、いつもの「はってはがせるスティックのり」で貼り合わせ・・・、

このようにカットしました。

開閉板とそれを止める板も切り出します。

これらにはこのように6mmの孔を空けて・・・、

ネオジム磁石を埋め込みます。

片方は木目シートを貼って磁石が外れないように固定しておきます。開閉板の方には2mm厚のダボを埋め込んで磁石同士の間隔を空けます。そうしないとネオジム磁石の強力な磁力で蓋を開けるときに無用な力を必要とするからです。

この反対側、開閉板の外側には蓋をあける取ってを埋め込みます。

仮組をして様子を見たら、どうやらこの部分を斜めにカットした方がよさそうです。

実はこれは余計な作業でした。後にさらに余分な作業をすることになったのです。

このように小さく切り出してからのカット作業はかなり難しいのですが、なんとかやってみました。

自作の並行クランプを使って組み立てます。

接着剤が乾いてクランプからはずしました。

蝶番を取り付けて開閉してみると、回転の中心がすこし外側に移るために扇形の部分が当たるので、切り欠きを入れて調整しました。

これでうまく開閉できるよになりました。

開閉テストをしてみます。ネオジム磁石の強さはちょうどいい具合です。

ここにきて思わぬ事態に遭遇です。なんと玉が扇形の脇に引っかかりそうなんです。そこでこのようなガイド板をつくり、扇型の間を通すようにしてみます。

ここに来て、先に作っておいた、発泡フォームカッターの登場です。これは製作記を書いた後で少し改良をし、なかなかの優れものになっています。

ガイド板を取り付けて様子をみると、この部分が余計なように見えます。せっかくのガイド板が役に立たないように見えるのです。

そこで、このようにカットしました。

しかし、実際には蓋は閉めて回転するので、このような形になりますから、カット作業は余分でした。

回転体のスペーサーとなる円盤を作ります。30mmの丸棒から5mm厚に三枚切り出しました。

これらの中心を求めます。これには自作のセンターファインダーを使いました。

中心に12mmの孔を空けるのですが、このように専用の固定治具を急遽作ってみました。

ここにきてようやく六角形の板を作ります。材料を効率的に使う為に自作のコンパスで木取りをします。

なんとか線が引けましたので、これをカットするのですが、これが案外難しいのです。

片方は内部が見えるようにと透明なプラスティック板を使いました。実際には無職透明な物が欲しかったのですが、手持ちのうすい青が入った透明な1mm厚のプラスティック板を使いました。

透明プラスティック板の中心の孔は両側から円盤で補強します。

三本のビスで取り付けました。

いよいよ全体の組立て作業です。

接着剤が乾きました。

玉を10個ほど入れて転がしてみたら、この部分にひっかかりました。斜めにカットしたところが棚になってしまったのです。

そこで、このように台形の板を張って玉がひっかからずに転がるように工夫しました。

プラスティック板の方はビスで固定し、分解できるようにしました。

回転体は時計と反対回りを想定しています。逆転しないように、逆転防止機構を取り付けることにしました。

鉛筆で描き入れて・・・、

切り出しました。これを上のハンドルに取り付けます。

逆転防止機構が出来ました。写真では見えませんが、動きをなめらかにする為、この下にはワッシャーが一枚入っています。

底板と立て板を取り付けて、ハンドルはビスで固定します。中心の12mmの丸棒は余分なはみ出し部分をカットします。

完成

完成しました。

レモンオイルで塗装してあります。

反対側はとてもシンプルです。

逆転防止機構もうまく動作しています。

テストラン

実際に玉を入れて動かしてみます。

挿入機構の蓋を開けて玉を入れます。逆転防止機構はこのように回転を途中で停止させておくこともできます。

ハンドルを持って時計と反対回りにゆっくり回転させると、このように玉がひとつ出てきます。

2015年11月8日 記

追加・改良

その後少し改良しました。

まず目に付くのは回転方向を示す大きな矢印です。

逆転防止機構の歯車が壊れてしまいました。力任せに逆転させてしまった結果ですが、合板ではなく一枚板を使ったのが原因です。そこで、3mm合板で作り直しました。元の歯車は実測で4.2mm厚だったので、その差分だけハンドルを削っています。

内部がよく見えるようにこのように窓を開けました。また、メンテナンスのとき透明板を取り付ける際のガイド板を付けました。

玉が出てきてあちこちに散らばらないように受け皿を作りました。溜まった玉はそのまま挿入機構から内部に入れることができるようにデザインしています。

2015年12月12日 記

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