工作室 58 空桶伴奏生成機
第一作(失敗編)
僕の学生時代はまだカラオケというものは無くて、飲み会の時に歌う場合はギターで伴奏するか、何も無ければ箸で皿や空桶をたたくとか手拍子ぐらいしか伴奏の方法が無かったものです。いつのころからだったか、スナックなどにカラオケ・マシンが入って人前でマイクを持って歌うという事が普及してきて、今では未成年者でも入れるカラオケ・ルームが街にたくさん出来てきました。
しかし、もっと気楽に自宅でカラオケを楽しめないものか。確かにCDを買うとボーカルの無いカラオケも入っている場合もありますが、アルバム曲ではそうも行きません。ボーカルを自動的に消すことができるといいのになぁ、などと思っていました。
そんなとき、これを見つけました。なんだか簡単にできそうなので、中に出てくる回路図通りに作ってみました。
Sing-a-long Song Devocalizer回路図の画面をスキャンするとこんな感じです。
適当な箱に各パーツを配置して配線するだけです。中点付きのトグルスイッチなんて買い置きがあるかなとガラクタ箱をさがしてみたら、なんと出て来ました。いつ買って置いたのかまったく記憶にありません。
こんなもので、本当にカラオケになるのかなと試してみたら・・・。全然できませんでした(-。-;)
理論はわかるのですが、左右の音を反転させているようには思えません。これは失敗でした。こんなに簡単にできるなら、もっとたくさん普及しているはずですからね。
ソフトウエア編
VectorでWindowsのソフトウエアを探してみると、こんなものがありました。
インストールして使ってみると、確かにボーカルが小さくなります。これをハードウェアで実現させたいものです。
第二作 デジタル差動アンプでボーカルを消す(成功編)
そんな事を考えていたら、電波新聞社発行の『電子工作マガジン』2014年11月号に「カラオケ・スピーカー」製作記事が載っていました。読んでみると、TPA2006というデジタル差動アンプに左右チャンネルの音を180度位相反転させて入力し、ボーカルを消してしまうというものです。これこそ求めていた物です。あいにく手持ちが足りなかったので立ち読みで済ませてしまいました。ごめんなさい。その後さっそくTPA2006を取り寄せて作ってみました。
回路図はこんな風になります。入力音源は携帯mp3プレーヤーからミニプラグで取り出すつもりです。
これがそのTPA2006です。秋月電子通商で1個なら300円、2個以上ならば1個あたり250円になります。
L型ピンヘッダが付属しているので、これを介してユニバーサル基板を適当な大きさに切り出して取り付けます。
スピーカーはいつも使っている2個で500円の口径8cm、8Ω10Wのこれを使う事にしました。
スピーカーの大きさに合わせて箱を設計してみました。
孔あけ加工をします。
他にこれらのパーツを使います。
- 100KΩAカーブ可変抵抗器 2個
- そのツマミ 2個
- トグルスイッチ 1個
- DCジャック 1個
- 発光ダイオード 1個
- 330Ω カラー抵抗器 1個
フロント、リアのパネルにそれぞれのパーツを取り付けます。
フロントパネルは黒く塗装しました。
ユニバーサル基板を取り付ける土台となる角材を接着します。
TPA2006の基板の裏側のこの部分(矢印)を半田付けしてショートさせます。
ユニバーサル基板にL型ピンヘッダを介してTPA2006の基板を取り付け、各リード線を半田付けします。
これを角材に木ねじで固定しますが、スペーサーでちょっと床上げをします。また、LED回りの配線の為、3Pのラグ板を取り付けておきます。
LEDを取り付けて、各配線をします。
入力はmp3プレーヤーなどを想定して、ステレオミニプラグ付きのケーブルを使いました。
わかりやすく拡大してみます。白が右チャンネル、赤が左チャンネル、緑がGND(アース)です。音量が調整された信号は、右チャンネルがTPA2006のプラス側へ、左チャンネルはTPA2006のマイナス側の入力として差動入力します。
フロントパネルが完成したので、箱に接着します。
中味はこんな風にぴったり収まっています。
箱が小さいのでこんな細めの紙筒を使って後面ダクトを作ってバスレフ方式にしてみました。
最後にDCジャックにリード線をとりつけ、吸音材を入れてから裏蓋を閉じます。
見栄えを良くするために、いつものように木目シートを貼りました。
後面はこんな感じです。
完成
電源は5V4AのDCアダプターを使いました。電源を入れ、mp3プレーヤーからの入力をします。はじめは左チャンネルだけ音量を上げておき、右チャンネルを少しずつ上げていくと、次第にボーカルの声が小さくなっていきます。すっかり消える訳ではありませんが、ほとんど聞こえないくらいに小さくなりますから、案外これぐらいが楽しめるのではないでしょうか?
聴いたのは(歌ったのは?)このアルバム。
藤あや子『おばこ巡礼歌』
今回の作品には動きが無いので、見返りドラゴン君に登場していただきました。
2014年9月28日 記